物流
2026.05.17
トラックの積載率が低い原因と積載改善に必要な6つの計画変数

トラックが出発するとき、荷台にはどれだけの空きスペースが残っているか。積載率が低いまま走り続けるトラックは、燃料代も高速代もドライバーの時間も「空気を運ぶために使っている」のと変わりません。
積載率が上がらない背景には、荷姿の不統一、重量と容積のバランス、配送順序の制約、混載ルールなど、複数の条件が複雑に絡み合う計画上の問題があります。さらに2024年4月からの時間外労働上限規制によって、ドライバーが走行できる時間は以前より短くなりました。少ない台数と限られた稼働時間で同じ物量を運ぶには、1台あたりの積載効率を引き上げるしかありません。なぜ積載率が低くなるのか、どんな変数が積載計画に絡んでいるのか、人手の積み付けにはどこに限界があるのか。最適化AIで積載率をどう改善できるのかを整理します。
この記事でわかること
- 積載率が低いとどんなコスト損失が生じるか
- 積載率が下がる4つの構造的原因
- 積載計画で同時に扱うべき6つの変数とトレードオフ
- 最適化AIで「詰め方の正解」を自動で導き出す仕組み
なぜ「トラックの積載率」が物流の利益を左右するのか
積載率50%は「空気に運賃を払っている」のと同じ
たとえば4トン車に2トン分しか荷物を積んでいなければ、残りの2トン分の荷台スペースは空気を運んでいるのと同じです。燃料費、高速代、車両維持費、ドライバーの人件費。これらのコストは荷台が満載でも半分でも大きくは変わりません。積載率が50%なら、荷物1個あたりの輸送コストは満載時のおよそ2倍に膨らんでいる計算になります。物流コスト全体の中で輸送費が占める割合は大きく、積載率の低さは利益を直接削る要因です。
2024年問題で「1台あたりの運搬量」の重要性が増した
2024年4月、自動車運転業務に年960時間の時間外労働上限が適用されました。ドライバーが走れる時間に上限がある以上、同じ物量を運ぶにはトラック1台あたりの運搬量を増やすか、車両台数を増やすかの二択を迫られます。ドライバー不足が続く物流業界で台数を増やす選択肢は現実的とは言えません。積載率の改善は、規制対応とコスト削減を同時に進められる数少ない手段です。
ドライバー不足時代に台数を減らす手段としての積載改善
積載率が上がれば、同じ物量をより少ないトラックで運べるようになります。台数が減ればドライバーの必要人数も抑えられ、燃料消費量やCO2排出量も下がる。荷主にとっては運賃交渉の材料にもなり得るでしょう。ドライバーの確保が年々難しくなる中で、「人を増やす」ではなく「1台あたりの密度を上げる」という発想への転換が求められています。
積載率が低くなる4つの構造的原因
荷姿がバラバラで隙間だらけになる
ある日の出荷リストには、段ボール箱、パレット積みの製品、筒状の建材、不定形の工業部品が並んでいる。サイズも形もバラバラの荷物を四角い荷台に詰め込めば、どうしても隙間が生まれます。パレットサイズが統一されていない荷主間の混載ではなおさらで、荷台の天面付近に大きな空きスペースが残ったまま出発するケースは珍しくありません。荷姿の不統一は、積載率を下げる最も根本的な原因です。
重量と容積のどちらかが先に限界に達する
荷台にまだスペースがあるのに「もう積めない」。逆に、重量には余裕があるのに荷台がいっぱい。こうした場面に心当たりはないでしょうか。金属部品のように重くて小さい荷物は、荷台がスカスカでも重量上限に達してしまいます。緩衝材で包まれた日用品のように軽くてかさばる荷物は、重量に余裕があるのに容積が先に埋まる。どちらの場合も、もう片方のキャパシティは余ったままです。この「重量と容積のミスマッチ」を解消するには、異なる特性の荷物を組み合わせて両方の上限に同時に近づける必要があります。
配送順序が積み方の自由度を奪う
荷台は基本的に「後から積んだものを先に降ろす」構造です。最初に降ろす配送先の荷物は最後に積まなければならない。この後入れ先出しの制約が、積載効率を考えた自由な配置を大幅に制限します。積載率だけ見れば最適な積み方があっても、配送順序を考慮すると採用できないケースが頻繁に発生するのです。配送ルートの設計と積載計画は切り離せない関係にあり、ルートが属人化している現場ではこの問題がさらに深刻になります。
混載の制約で「載るのに載せられない」
食品と化学品は同じ荷台に載せられない。常温品と冷蔵品は温度帯が異なるため混載が難しい。危険物には専用の車両が求められることもあります。荷台にスペースがあっても、荷物同士の相性によって「物理的に載るのに載せられない」状況が頻繁に発生します。温度帯別の仕切りを使えば一部は対応できるものの、どの組み合わせが混載可能かを毎回判断するだけでも相当な手間がかかるのが実態です。
積載計画で同時に扱うべき6つの変数
(1) 荷物の3辺寸法・重量・形状
積載計画の出発点は、個々の荷物の寸法・重量・形状を正確に把握することです。段ボール箱なら縦×横×高さで表現できますが、円筒形のドラム缶、L字型の鋼材、不定形のバルク品はそう単純にはいきません。形状によって隙間の生まれやすさがまったく変わるため、「何がどんな大きさで何キロあるか」のデータが揃っていなければ積載計画は始まらないのです。
(2) 荷台の内寸と最大積載重量
2トン車と10トン車では荷台の内寸も最大積載重量もまったく異なります。同じ4トン車でも、箱型かウイング車かで荷役の方法が変わり、実質的に使える空間にも差が出るでしょう。車両によって床面の耐荷重や天井高が違うため、荷台の物理的な制約を正確に定義しないと「入るはずの荷物が入らない」が現場で繰り返されます。
(3) 配送先の順序と後入れ先出し
5件の配送先を回るとき、最初に降ろす荷物を荷台の奥に積んでしまったらどうなるか。手前の荷物を全部降ろしてから奥の荷物を取り出し、再び積み直す。時間がかかるだけでなく、荷傷みのリスクも増えます。配送先の順序は積み付けの順序を事実上決定してしまうため、ルートと積み方を切り離して考えることはできません。
(4) 積み重ね可否と向き制約
精密機器の入った段ボールは「天地無用」。飲料のケースは3段まで積み重ねられます。冷蔵品は横にできない。荷物ごとに「上に何キロまで載せてよいか」「どの向きで積むべきか」の条件が異なり、これを守らなければ荷傷みやクレームにつながります。1つの荷物の向き制約が、その周辺に配置できる荷物の選択肢も狭める。変数同士が互いに影響し合う構造です。
(5) 混載ルール(温度帯・危険物・汚染)
同じトラックに載せてよい荷物の組み合わせは、法令や品質基準で細かく決められています。常温・冷蔵・冷凍の温度帯ごとの区分け、化学品や危険物の隔離、食品衛生上の汚染防止。1つでもルールを破れば事故や製品回収につながりかねません。この混載可否の判断を、全荷物の組み合わせに対して行うだけでも膨大な確認作業が必要です。
(6) パレット規格と荷役方法
フォークリフトで積み込むか、手積みか。この選択だけで使える荷台スペースの広さが変わることをご存じでしょうか。フォークリフトを使うならパレットの規格に合わせた配置が必要で、荷台の横幅いっぱいにパレットを並べても数センチの隙間が生じることがあります。手積みなら隙間を詰められる反面、作業時間は何倍にも膨らむ。荷役方法の選択が積載率と作業効率のトレードオフを生んでいます。
なぜ「ベテランの積み付け」では限界があるのか
30個の荷物でも組み合わせパターンは天文学的な数になる
仮に30個の荷物をトラックに積むとします。どの荷物をどこに、どの向きで、どの順番で配置するか。その組み合わせは数十億通りを軽く超えます。ベテランドライバーは経験則で「だいたい良い積み方」を見つけられるかもしれません。しかし全パターンを頭の中で検討しているわけではないのです。重量制約、積み重ね条件、配送順序を全部守りながら空きが最も少ない積み方を人間が導き出すのは、物理的に不可能と言ってよいでしょう。
最適かどうかを検証する手段がない
ベテランが積んだ結果、積載率が75%だったとします。これは良い数字なのか、それとも本当は85%まで詰められたのか。比較対象がないため、誰にも判断できません。「いつも通り積んだ」が最善かどうかを確かめる方法がない。改善の余地があるのかないのかすらわからない状態では、積載率の改善目標を設定すること自体が難しくなります。現状維持が続く理由はここにあります。
出荷情報の変更に即応できない
当日朝になって「追加の荷物が3件入った」「A社の出荷がキャンセルになった」。出荷情報が変わるたびに積み付け計画を練り直す必要がありますが、出発時刻は待ってくれません。ベテランなら経験で何とか対処できるかもしれないものの、新人が同じ対応をするのは無理です。結果として「とりあえず載せられるだけ載せる」に流れ、積載率はさらに悪化します。変更のたびに計画の質が落ちる構造は、人手の積み付けが抱える根本的な弱点です。
最適化AIが切り拓く積載改善の道
最適化AIとは、現場のルールを守りながら最も良い計画を自動で見つけるAIです。荷物のサイズ・重量・形状、荷台の制約、配送順序、混載ルールといった条件をすべて読み込み、膨大な組み合わせの中から空きスペースが少ない積み方を探し出します。
全制約を守りながら空きスペースを最小化する精度
最適化AIの強みは、人間が「だいたいこのへん」で妥協していた積み方を、定量的に探索できる点です。重量上限、積み重ね可否、向き制約、混載不可の組み合わせ。これらをすべて守った上で、空きスペースができるだけ少なくなる配置を計算します。ベテランでも見つけられなかった積み方が出てくることがあるのは、人間が直感で省略していた選択肢をAIが漏れなく検討するためです。部分的に積み方を工夫するのではなく、荷台全体を一度に最適化する点が、手作業との根本的な違いになります。
出荷情報が変わっても即座に再計算するスピード
ある回収物流の現場では、回収品の形状や重量が日によって大きく変わるため、積載計画の作成にベテランでも相当な時間を要していました。最適化AIの導入後は、その日の回収品データを入力するだけで、複雑な積載条件を考慮した計画が自動で生成されるようになっています。当日の出荷情報が変わっても、新しい条件で即座に再計算できるため「とりあえず積む」に逃げる必要がなくなりました。変更への対応力こそ、計画の質を安定させる鍵です。
誰が積んでもベテラン同等の結果になる透明性
なぜこの荷物をこの位置に置くのか。ベテランの頭の中にしかなかった判断基準が、AIの出力として可視化されるとどうなるでしょうか。新人ドライバーでも、画面の指示通りに荷物を配置すればベテランと同等の積載率を達成できます。人による品質のばらつきがなくなり、チーム全体の積載効率が底上げされるのです。さらに、積み付けだけでなく配送ルートとの同時最適化によって「積み方を変えたほうがルート全体の効率が上がる」といった発見も可能になります。
まとめ
トラックの積載率が低い原因は、荷姿の不統一、重量と容積のミスマッチ、配送順序による積み付け制約、混載ルールという4つの構造的な問題にあります。これらを解決するには、荷物の寸法・重量から混載ルール、パレット規格まで6つの変数を同時に扱う積載計画が不可欠です。
しかし、これだけ多くの制約を人手で処理するには限界があります。30個の荷物でも組み合わせパターンは膨大で、ベテランですら全選択肢を検討することはできません。出荷情報の変更にも即応しなければならないため、属人的な積み付けでは安定した積載率を維持し続けることが難しいのが現実です。
最適化AIは、6つの変数を同時に考慮し、全制約を満たした上で空きスペースが最も少ない積み方を自動で導き出します。出荷情報が変わっても即座に再計算でき、誰が積んでもベテラン同等の積載率が実現できる。ドライバー不足と2024年問題に直面する物流業界で、積載率の改善は輸送力を維持するための現実的な一手です。
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